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【第2回インタビュー/平石洋介外野手(トヨタ自動車)】     取材・構成・写真/島尻譲

『僕は僕らしく、楽しく野球がやりたい』
三拍子揃っていることは
レギュラーを張る資格が与えられている

Yohsuke Hiraishi #10

幸いなことに数多くの選手を取材する機会に恵まれている。
どの選手にも思い入れはあるが、
印象に残る選手を挙げろと言われたならば―。
真っ先に平石洋介の名前が出て来るに違いない。

平石は自身の想いを限りなく正確に語る術を身に付けている。
語彙が豊富で、話し方や進め方も非常に上手だ。
本当に話しを聴いていて楽しい選手である。

実は今回で平石への取材は3度目になる。
そのような背景もあるので、
平石は都市対抗大会期間中にも関わらず、
熱く色々なことを“彼らしく”語ってくれた。
技術論から思い出話しなどなど、1時間半以上にも渡って。
その全てを掲載したいくらいだが、
今回は彼の“野球観”が分かる部分を中心に構成させて貰った。

※取材/9月1日(都市対抗期間中)宿舎にて

最高の準備がしたい
儀式ではなくルーティーン


−元気そうやね。調子もええみたいやし。

平石 どうなんでしょうね(笑)。
まぁ、当然、コンディションは都市対抗に合わせるようにはして来たんでね。


−さすがやなぁ。ところで、社会人野球ってどうなん?

平石 昨年は1年目で、都市対抗の予選が始まるまでは特別な印象はなかったんですけど、社会人野球は応援も良いですしね。特にトヨタの場合はお客さんもたくさん来てくれますし、雰囲気がええなぁって。うん、社会人野球も悪くないなと。あんまり注目度は高くないのが現実なんですけど(苦笑)。まぁ、大学時代(同大)も松下電器や大阪ガスの代表決定戦は観ていて、それなりに凄いとは感じていたんですけど、実際に自分がその環境に入ってみると想像していた以上に華やかやなぁと。

−その華やかな世界で1年目からレギュラー(1番・中堅手)に。

平石 レギュラーは獲るつもりでした。目標はさらに高いところにある訳ですから。ポジション的にも慣れ親しんでいたので違和感も全くなかったので、スンナリと入って行けましたよ。

−で、平石と言えば、万全な態勢で試合に臨むという印象があんねんけど、現在も変わってないね。
僕は試合前(×NTT信越硬式野球クラブ)のダグアウトから観ていたよ。あっ、平石が準備しているわって(笑)。

平石 やっぱり、自分の間とかリズムは大事ですし、やるからには“最高の準備”をしたいということは常に意識していますよ。

−それって、いつ頃からなんかな?

平石 高校時代(PL学園)に左肩の手術もして、自分なりには勉強していたんですけどね。でも、大学に入ってから体を診てくれる先生に出会ってからでしょう。精神的な部分と肉体的な部分、色々なところで繋がっているということを理解出来るようになりましたよ。まぁ、動作的な部分では大学時代の形から省いたり、新しく取り入れたりはしているんですけど、もう自分の形になっていると思っています。これをしとかんとスッキリしないという儀式的なものではなく、もう完全にルーティーンになっていますね。常に同じ準備をしておくことで、より緊迫した場面でも力が発揮出来ると思いますから。普段通りの流れというのは大事なことですよ。

−試合中の修正という点に関しては?

平石 具体的に説明するのは難しいんですけど、確実に学生時代よりはその能力は上がりましたね。ただ、体のコンディションが悪いとどうしても修正が効かない。悪いなりにもどう修正して行くかという部分をこれからはやって行かないと。

聴く耳は持っているが周囲の評価は気にしない
後悔したくない、楽しく野球がやりたいから


−今回は聴き難いところもあんねんけど。うん、是非、聴いとかんとイカンなぁ。今年はドラフトの対象選手でもある訳やん。平石は三拍子揃っているがゆえに評価が真っ二つに分かれる。その辺は平石の耳にも入っているんかな?

平石 ソコソコ打てて、ソコソコ守れて、ソコソコ走れる。だけど、プロの世界でやって行くにはセールスポイントがないみたいな(笑)。

−ズバリ、その部分です。

平石 今は一切、気にしてないですね。大学時代は自分がプロに入ったら、どういう選手になったらええんやろう?と考えていた時期もあります。まぁ、それで崩れた訳ではないですけど、面白くなかったですからね。僕は僕らしくありたい。自分で納得して“こうするんや!”やったら構わないけど、きっと後悔する。好きでやっているはずの野球が楽しくなくなってしまいますよ。やっている人間が楽しくなかったら、観ている人間だって楽しくないでしょうし。自分の野球人生なんだから。いや、野球に限らず、全てですね。例えば、大学を選ぶにしても、他人の「そういう夢があるんやったら○○大学に行きぃ」みたいに敷かれただけのレールを自分の意思もなく歩いたら…その時は良いかも知れないけど面白くないはずやし、いつか後悔する。結果がどうこうでなくて“自分でケツを割らない”ことに意味があると思うんです。そりゃ、貴重なアドバイスもあるし、評価だってしてくれるかも知れない。でも、それが全てではない。だから、聴く耳は持っていますけど、最終的には自分というのを見失わんように。

−う〜ん、なるほどぉ。

平石 表現は悪いんですけど。野球に関しては“素人”の方の一言。野球をやったことのない人間の言葉の方がハッとさせられる時が多いんですよ。“素人”の人間って、先入観なしで見たまんまを言うてくれるじゃないですか。せやから、野球の世界という枠だけに留まらないで色々な世界の方と知り合う機会は大事にしているし、色々なスポーツも観るようにしています。

−それは確かに大事なことやね。

平石 あと…三拍子揃っているのはセールスポイントがないと評価する人間もいるのかも知れないですけど、僕は野球というスポーツでは“レギュラーを張る資格”が与えられていると思うんですよ。何かに飛び抜けているだけでは、なかなかレギュラーにはなれない。逆に言うと、僕みたいなタイプは全ての部分である水準を保つ努力もせなアカン。僕よりも三拍子揃っている選手がチームにおったら試合に出れなくなるんですから。要は僕はそういう選手なんです。1試合、1打席だけで評価するならして下さい。でも、それで僕の何が分かりますか?僕の持ち味はレギュラーとして試合に出る。こういう仕事をする、こんな仕事も出来る。勿論、ある程度の数字も残さないとならない。幸い、そういう風に観てくれている人間もいるでしょうから頑張れるんですけどね。

ライバル意識はほとんどないが
刺激は受けるし、純粋な喜びもある

−僕はあんまり好きな言い方じゃないんやけど。
まぁ、俗に言う“松坂世代”な訳やん。
実際、高校時代は松坂(大輔投手/西武)とも対戦しているし、身近なところやと大西(宏明外野手/大阪近鉄)も活躍。他にもぎょうさんプロで活躍している。ライバル意識みたいなものはあるんかな?

平石 ほとんどないですねぇ(笑)。
プロでやっている奴はプロでやっている奴。僕はまだ所詮アマチュア。あっ、これはアマチュアを見下しているという意味ではないですよ。結局、僕はプロという世界に足を踏み入れたことがない。経験をしたこともない訳ですから、語ることが出来ないんですよ。でも、良い刺激は受けるし、純粋な喜びというのはありますね。

−例えば?

社会人野球に限らず、たくさんの同世代がいます。仲が良い奴もいれば、知らん奴もたくさんいる。でも、同い年が頑張っていれば刺激になる。また、仲の良い奴と対戦した時はホンマに面白い。これが喜びですね。

−実際に対戦していて面白いのは?

平石 今はミツ(光原逸裕投手/JR東海)ですねぇ。同じ東海地区ですし、たまに飲みに行ったりもして仲も良いんですよ。で、野球の話しもしたりする。それでOP戦や地区予選とかあるじゃないですか。

−そうやねぇ、結構、対戦する機会も多いんちゃう。

平石 この前もミツがリリーフで出て来たんですよ。その試合、僕は2打席連続でヒットを打っていて、調子が良かった。それでピッチャーがミツです。インハイのストレートに少し差し込まれたかなぁとは思ったんですけど、体が巧いこと反応してライト線のツーベース。お互いに普通にはしているけど、僕は僕で嬉しいし、ミツはミツで悔しいやろうなと(笑)。

−うん、そりゃ、そうやわ(笑)

平石 で、次の打席。ここで考える訳ですよ。ミツの性格やったら、どないして攻めて来るんかなと。変化球もありかなと。そうしたら、全く同じボールで来ましたよ、インハイのストレート。結局、詰まってセンターフライです(苦笑)。悔しかったけど、あれはホンマに楽しかったなぁ。

−そういう読み合いが付き合いのある同級生ならではなんや。

平石 まぁ、同級生だけでなく、人間同士の付き合いは大事。僕は他人からしてみたら順風満帆な野球人生なのかも知れない。せやけど、逆境もたくさんあったんです。そんな時に野球を通して、人付き合いというものを学んで来たことで救われたところも多い。先輩を相手にするから言うて、堅苦しくしていれば良い訳でもないし。後輩を相手にするから、ただ偉そうにしていれば良いということでもない。たくさんの仲間に支えられているし、僕も時には支えてあげることが出来る。

−まさにその通りや。

平石 当然、最低限の礼儀は必要。そういうことをPL、同志社、トヨタで学べて来たことは財産ですね。野球の技術や体力よりもそのことに感謝しています。だって、国際大会とかでもそうですもん。僕も何度か国際大会の経験がありますけど…確かに日の丸を背負うとか、外国のチームから学ぶとかもあるんですけど、それよりも代表選手との会話から学ぶことの方が圧倒的に多い。野球は人間関係、人付き合いが大事なんですよ。それで野球も人間力も磨くことが出来るんですから。

同い年の光原(JR東海)と
東京ドームのネット裏で談笑している平石

平石の魅力
それは野球に対する姿勢と人間力


初めて平石を観たのは6年前の夏の甲子園だった。
伝説とも呼ばれ、誰の胸にも深く刻まれている“あの延長17回”である。
背番号13を付けた主将の定位置は三塁コーチャーズボックス。
しかし、試合が決まる本塁打がスタンドに吸い込まれた時は一番近くの右翼の守備位置に着いていた。そして、ガックリと肩を落としていた姿が印象的だ。

同大でも主将として悲願のリーグ優勝を目前にする。
だが、土壇場で近大にまさかのサヨナラ負けを喫して、優勝を逃してしまった。
その瞬間、センターの守備位置の少し前で両膝をグラウンドに突き、天を仰いでいた。まるで悔し涙がこぼれ落ちないようにでもするかのように。

そして、今回の都市対抗。
このインタビューをした翌日になるのだが、トヨタ自動車はホンダにサヨナラ負け。
神妙な面持ちでヘルメットやバットを片付け、東京ドームの一塁側ダグアウトから引き上げる平石。僕はまたもや平石のうなだれる姿を目の当たりにしてしまった。

平石は陰に回る宿命を背負った野球選手なのか?いや、決してそうではない。常に頂点を目指しているからこその悲劇にしか過ぎない。そこまで辿り着けない人間の方がこの世の中では圧倒的に多い。だから、陰である訳がない。

《情けないです。また出直します》
ホンダに敗れた晩、平石は僕にメールを送って来てくれた。
簡潔ではあったけれども、平石の野球への姿勢と人間力が滲み出ていたメールであったと感じた。平石の魅力はここにある。
これからも磨き続ける野球への姿勢と人間力。きっと大きな夢を掴むはずだ。そして、どんな形であれ、野球界を支える人間になるであろう。

平石がこれから歩む道にも燦々と陽が射し込むことを及ばずながら願っている。

《平石洋介(ひらいし・ようすけ)プロフィール》

1980年4月23日生=24歳 176a・74`
左投左打 出身地/大分県 血液型A

PL学園高−同志社大−トヨタ自動車(2年目)


高校時代、左肩の手術をした影響でレギュラー選手にはなれなかったが、統率力を買われて主将を務める。
そして、高校野球史に残る“延長17回”で松坂(西武)擁する横浜と死闘を経験した。
同大入学後、故障も癒え、大学球界を代表する選手に。
関西学生リーグではベストナインを4度受賞。
また、世界選手権(イタリア開催)の日本代表メンバーにも選ばれて活躍した。
トヨタ自動車入社後も着実に力を付け、今夏のハーレム大会の代表選手にも選出される。
打守走の三拍子揃った外野手で今秋ドラフト候補にも名前が挙がっている。