【第6回インタビュー/加藤学投手(関西学院大)】 取材・構成・写真/島尻譲
“ノンビリ屋”は返上!
大学野球生活ラストイヤーの飛躍を誓う
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“好投手”とは?
時折、そのテーマについて考え込んでしまうことがある。
試合を観ながら、試合を振り返りながら。
また、投手・打者・指導者などの話しを聴きながら。
そして、結論が出ることはないのだけれども
“負けない投手”というのが
“好投手”の一つのポイントとなっているような気がする。
そのような観点では…まだ加藤学は“好投手”ではない。
しかし、加藤学の投球には何かを感じる。
実際、他校の監督・コーチ・主力選手は
「まとまりあるし、ええピッチャーですよ」
と口を揃えるし、社会人野球からの評価も高い。
発展途上の投手・加藤学。
今季は飛躍を誓い、“好投手”への扉を開く!
Manabu Katoh #18
※インタビュー/05年2月8日 関西学院大正門前『カウカウ』にて
中学時代は三塁コーチャー
高校では1年夏からベンチ入り
−今日は宜しく頼みます。せやけど、学が相手やと僕の口の利き方が横柄になってしまいそうやわ。一応、先輩やし(笑)。今日はバシッと喋ってくれよぉ。
加藤 メッチャ緊張しています。みんなからは「面白いこと言うて来い」って言われてるんですけど…多分、無理です。
−面白いこと言うてくれるんやな。
加藤 はい、頑張ります。
−まぁ、普通でええねんけど(笑)。では、プロフィール・球歴から聴いておこうか。
加藤 生年月日は83年4月3日です。
−おっ、4月3日なんやぁ!
加藤 金本(知憲外野手・阪神)、高橋由(由伸外野手・讀賣)、上原(浩治投手・讀賣)と一緒になりますね。
−“野球の巧い日”生まれやん(笑)。
加藤 そうだと良いんですけど(笑)。
−で、出身地・血液型・野球を始めたんは?
加藤 出身地は千早赤坂村です。大阪で唯一の村なんで恥ずかしいです(笑)。血液型はO型で、野球を始めたのは小1でソフトボールでした。
−最初はソフトボールやったんや。体は大きかったん?
加藤 小さかったですね。ピッチャーもやっていましたけど、サード・ショート・センターと色々なポジションをやりました。小5の時から軟式です。6学年上に兄がいるんですけど、その兄が高校野球をやっていたのがキッカケですね。
−中学では?
加藤 学校では陸上部に籍を置いて、河内長野ボーイズで硬式を始めました。
−河内長野ボーイズって強いんちゃう?
加藤 自分らの時はもう“古豪”と呼ばれていました。昔は強かったみたいな(笑)。
−この頃からピッチャーに専念したんかな?
加藤 そうですね。でも、力もなかったし、体も小さかったので3年まで試合には出られなかったんです。まぁ、声は大きかったんで三塁コーチャーでした(笑)。全国大会とかの経験もないです。
−高校(清教学園高)進学はボーイズの関係とかやったんかな?
加藤 いえ、一般受験です。元々、関学大に行きたいと思っていましたし、野球もソコソコの学校やったんで。清教学園高の部長さん・監督さんに「受けてみたらどうだ」とは言われましたけど。当然、甲子園に行きたいという気持ちもあったんですけど…今、考えるとそんなに強い気持ちではなかったですね。
−清教学園高は進学校やし、大学で野球を続ける選手も多いもんなぁ。それで、高校野球生活はどないやったん?
加藤 高1の夏からベンチ入り(背番号18)して、公式戦で先発もさせて貰いました。確か4回戦まで行ったと思います。
−期待の新入生やったんや。
加藤 いえいえ、体は相変わらず小さいし(身長170a程度)、球も遅かったです(130`届かず)。球種もストレートとカーブだけやったんですけど、ストライクだけは取れましたね。それで使って貰えたんやと思います。
「俺は何しとんねんっ!」
スライダーを覚えたのが大きかった
−ピッチャーとして成長したのは?分岐点みたいな。
加藤 高2〜高3。球速がアップしましたね。130`台後半はコンスタントに出るようになりました。
−一冬を越しての成長だ。高校野球やなぁ。何か意識した練習とかあったん?
加藤 特別ないんですけど、アメリカン・フットボールのボールを投げたり、軸足(右足)が沈まないように置いてある椅子に座るシャドーピッチングは採り入れるようになりました。あとは…あんまり書かないで欲しいんですけど。
−了解。
加藤 (本人の強い希望で詳細は省略させて戴きます…御了承の程を)
で、高2の夏に気合を入れて、大会に臨んだんですけど初戦敗退…。その時の「俺は何をしとんねんっ!」という気持ちもありました。
−そういうことがあったんや。
加藤 技術的にはスライダーを覚えたのも大きかったです。自分が思っていたよりも案外、曲がった(笑)。これで高3の夏はベスト8まで行けたようなものです。
−清教学園高では入れ替わり。関学大では1・4(1回生・4回生)の山之内(克憲投手、現トヨタ自動車)の影響は?
加藤 よく高校の練習に来られていて。関学大に行っているし、プロ注目でも騒がれていましたからね。
−当時はなぁ(笑)。
加藤 大きくて(身長189a)、雰囲気と言うかオーラみたいのがありました。フリーバッティングとかで放ってくれていたんですけど、アウトコースにキッチリと投げ続けていました。力だけじゃなく、そういうところが凄いと思いましたね。
−直接、アドバイスを受けたこととかは?
加藤 あんまり話してないんですけど、カットボールみたいなスライダーを握り方から教わりましたね。
相手の強力打線を意識することはなかった
2回生秋は恐いもの知らずで終わったシーズン
−大きな期待を受けて関学大に入った訳なんやけど、デビューはちょっと遅かったなぁ(苦笑)。
加藤 そうですね、性格が“ノンビリ屋”なんで(苦笑)。
−故障もあった。
加藤 右肩ですね。まぁ、たいしたことなかったし、4回生に山之内さんや松村さん(充弘投手)もいたので焦ることないや、無理することないやと。
−故障の原因はなんやったん?
加藤 体が出来ていなかったのもありますけど、精神的なものですかね。生活面でも自覚が足りなかったです。食生活や体のケアがホンマにダメでした。
−で、ようやく“ノンビリ屋”が2回生の秋にデビュー。
加藤 真ん中(中継ぎ)・後ろ(抑え)で投げさせて貰って2勝ですね。
−リーグ戦初勝利は?
加藤 近大戦ですね。森本さん(徹投手、今季より三菱自動車岡崎)の後で、負けていたんですけど、逆転して勝ち投手に。
−近大の強力打線にプレッシャーはなかったん?
加藤 中村さん(真人外野手、現シダックス)、雅彦さん(田中捕手、現千葉ロッテ)、藤田さん(一也内野手、今季より横浜)、若林さん(建志外野手、今季よりNTT西日本)。あと、中東(信二内野手)とかもですね。ネット裏でデータ係をしていた時と同じメンバーやと思ったくらいで相手の強力打線を意識することはなかったですね。“ノンビリ屋”ですから(笑)。
−あと1勝は京大かな?
加藤 はい、初先発でした。まぁ、この2回生の秋は恐いもの知らずで終わったシーズンでしたね。勢いだけでどうにかなった部分がありました。
本荘雅章投手コーチの指導を受ける
−そして、昨年。3回生春からはエース格として投げるように。なかなか結果も出ないで苦しんでいたんちゃうかな?
加藤 う〜ん…まぁ、2回生の秋が悪くなかったんで欲はありましたよね。結果が出なかったことは悔しいですけど、周囲が言う程、気にはしていませんでした。一晩、寝たら切り替えられるんで(笑)。ただ、形にこだわり過ぎた部分はありました。どこかでキレイに投げようと意識していたところはあったと思います。
−各校のエース格と投げ合うことで学んだこともあると思うんやけど。
加藤 やっぱり、染田さん(賢作投手、今季より横浜)と三木田さん(敬二投手、今季よりシダックス)ですね。染田さんはボールカウントの作り方、緩急の付け方が巧い。いざとなれば力でも押せる。三木田さんはタイプこそ違うんですけど、自分と同じで体力的にはあまり恵まれていない。だけど、腕がちゃんと振れるし、何よりもマウンド度胸がある。ハワイ遠征(04年8月/関西学生リーグ選抜)の時、三木田さんにはボロカス言われていたんです。「アカンなぁ、プールに突き落とすぞ」とか(苦笑)。でも、色々と教えて貰いました。
−本荘さん(雅章投手コーチ)はどう?
加藤 経験も実績もある。特に精神的なことが為になります。日頃の心構え・ブルペンでの調整・試合中のこととか。技術的には感覚的な部分があるので全てを吸収するのは難しいんですけど…今、“捻りで立つ”みたいのは分かるようになって来ました。初めて聴くことも多くて、いつも新鮮です。だから、恩返しをしたいですね。
これからも同じ舞台で勝負したい
自分の我を出して行きたい
−さぁ、大学野球生活ラストイヤーを迎える訳やけど。
加藤 今、岩田(稔投手、関西大)や平野(佳寿投手、京都産業大)が注目されていますし、実際に彼らのことは凄いと思う。でも、関西5リーグ対抗戦、ハワイ遠征、リーグ戦とかを通じて、これからも彼らと同じ舞台で勝負したいという気持ちが強くなっています。ただ、まだまだ自分は何かが足りない。それは与えられた練習しかやって来なかった。限界まで自分を追い込んだことがないというところと関係しているんちゃうかなと思うんです。
−うんうん。
加藤 厳しいのは承知のうえで心の底からリーグ戦で優勝したいという気持ちもあるし、今年は自分の進路・野球人生でも大事。まだ、実戦で投げていないんで分からないんですけど、ウェートトレーニングも例年以上に力を入れて体重も増えた(75`)。手応えを感じているんです。
−確かに下半身が一回り大きくなった感じやね。で、もっと具体的に変えたいと思っているところは?
加藤 小さい頃からの教えで…自分は味方のエラーとかがあってもマウンドでは感情を出さない。いや、出さないようにしているんです。
−うん、いつもポーカーフェイスやもんなぁ。
加藤 それもピッチャーとしては大切なことやと思うんですけど、自分が試合で投げているビデオを観ていてもホンマに淡々としていて面白くないんです。観ている人間の鳥肌が立つようなピッチングがしたいですね。
−要するにメリハリという部分やね。
加藤 はい、あとは今まで配球・組立はキャッチャー任せやったんですけど、今年は要所で、時と状況によっては自分の我を出して行きたい。それでキャッチャーも成長出来る部分もあると思いますし。
−なるほどぉ。数字的な目標は?
加藤 防御率にこだわりたいです。絶対に0点台。出来れば0点台前半で。そうすれば勝星は付いて来ると思います。
−リーグ戦では金刃(憲人投手、立命大)、大隣(憲司投手、近大)、田林(正行投手、同大)らの下回生の好投手と投げ合うことが多くなると思うけど。
加藤 みんな良いピッチャーですけど、先輩の意地もあるから負けない。負けたらムカツキますし(笑)。
−そうそう、そういうコメントが欲しかってん。もう“ノンビリ屋”の優等生は返上やで。
加藤 そうですね。とにかく今のままではダメ。今までと変わったところを観て欲しい、感じて欲しいです。
−期待してるでぇ。スポーツライターとして。そして、先輩として。
加藤 はい、頑張りますっ!
【編集後記】
加藤学は決して饒舌ではない。
しかし、今回はだいぶ頑張って、熱く語ってくれた。
そして、慎重に言葉を選んでいたけれども、
大学野球生活ラストイヤーに懸ける想いも充分に伝わって来た。
下回生時代はどこかフニャフニャしていて“ひ弱”な印象も強かったが、
今では精悍な顔付きがスッカリ板に付いている。
まぁ、それも当然の話しだ。
昨季はエース格として様々な経験を積んで来た。
今季からはチームの副将という肩書きも加わっている。
いつの間にか頼もしい男に成長していたのだ。
加藤学の自覚は本物である。
僕はそう信じている。
1983年4月3日生=21歳 176a・75`
右投右打 血液型/O 出身地/大阪府
千早赤坂小−千早赤坂中−清教学園高−関西学院大
小1より野球を始める。
中学進学後、河内長野ボーイズに入り、本格的に投手転向。
高校進学後は1年夏からベンチ入り。
3年夏は大阪府大会ベスト8の原動力となった。
大学でのリーグ戦デビューは
2回生秋と早くはなかったが、資質の高さを垣間見せる。
3回生秋までリーグ戦通算5勝8敗 防1.69。
オーソドックスな右手スリークォーターから繰り出す
球種はストレート、カーブ、スライダー、フォーク、チェンジアップ。
ストレートは130`台後半〜140`台前半がアベレージ。
今季の活躍が期待される。
《加藤学(かとう・まなぶ)プロフィール》