【第8回インタビュー/宮西尚生投手(関西学院大)】             取材・構成・写真/島尻譲

今春、連続イニング無失点記録を更新!
左腕王国・関西学生リーグに現れた期待の新星

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《宮西尚生(みやにし・なおき)プロフィール》

1985年6月2日生=19歳 178a・73`
左投左打 血液型/O 出身地/兵庫県
立花南小−立花中−市立尼崎高−関西学院大

小1より立花ドリームズ(軟式)で野球を始める。
キッカケは高校野球が大好きな母親に連れて行かれたとのこと。
最初は外野手であったが、小3より投手に専念。
中学入学後、尼崎ボーイズに入り、
南大阪大会・優勝と北河内大会・準優勝を経験。
市立尼崎高時代は1学年上の金刃と共に注目の左腕であったが、
兵庫県大会3位(3年春)が最高成績。
関西学院大では昨秋、デビューを果たす。
そして、今春、一気にブレイク!
連続イニング無失点記録(48回1/3)を更新して、
最優秀投手賞も獲得した。
ストレートの最速は143`であるが、
生命線である球持ちの良さで実測以上に感じさせる。

Naoki Miyanishi #19

今、関西学生リーグは好左腕投手たちが凌ぎを削っている。
岩田稔(関西大)、金刃憲人(立命館大)、大隣憲司(近畿大)。
山田貴史(立命館大)あたりも今春から安定した投球を見せている。
そこへさらに新たな左腕投手が加わった。
その投手の名前は宮西尚生(関西学院大)である。
昨秋(1回生秋)、リーグ戦デビューを果たし、
リリーフ登板で2回を投げて2奪三振・無失点と
大器の片鱗を垣間見せて迎えた迎えた今春は
登板試合7 投球回数47 奪三振49 与四死球7 失点2 自責2
4勝1敗 防御率0.38 という堂々たる成績。
驚くべきは白星の全ては先発して完封勝利で挙げたもの。
リリーフ登板も含めて、
宮西はスコアボードに『0』という数字を並べ続けた。
そして、昨秋の2回を合わせて、
連続イニング無失点は48回1/3まで伸びた。
これは89年春〜秋/酒井光次郎(近畿大)の持つ
リーグ記録45回を更新するものである。

※旧関六では71年秋/山口高志(関西大)の68回


※インタビュー/05年5月24日
関西学院大 学生食堂『BIG PAPA』にて

実は『スゴイことをしているんやなぁ』とメッチャ意識
でも…記録よりもあの試合での1勝が欲しかった


−まずは春のリーグ戦、お疲れ様やったね。そして、残念ながら12年振りのリーグ優勝こそ逃してしまったけれども、連続イニング無失点の記録更新おめでとう!

宮西 ありがとうございます。この春は初めてシーズンを通して投げることが出来てホンマに自信になりました。

−リーグ戦が終わってから約1週間。疲れの方はどないかな?

宮西 体力的なことよりも精神的なところですね。リーグ戦が終わって急に疲れがドッと出て来ました。ちゃんと練習せなアカンのですけど、3日間くらいは何も出来へんでボーッとしてしまいました(苦笑)。

−まぁ、そうやろうね。やっぱり、優勝が懸かっていたし、記録のこともあったからかな?

宮西 そうですね。段々と報道陣の数も増えて来るし(笑)。リーグ戦中は『記録は意識していない』と言うてましたけど、実は『スゴイことしているんやなぁ』とメッチャ意識してましたね(笑)。

−それが普通やって(笑)。

宮西 でも、記録を作った酒井さんのことも分からないですし、坂田さん(穣/監督)や本荘さん(雅章/投手コーチ)からも記録のことは何も言われなかったのが良かったんやと思います。

−そうかぁ、宮西君の年齢やと酒井さんを知らないんやね。近畿大から日本ハムへ行って、小柄やったけど良い投手だったよ。宮西君と同じ左投手。

宮西 そうなんですか。それにしても山口さんの68回というのはとんでもない記録ですよね。

−山口さんは今、阪神でスカウトをやっていて僕もメッチャお世話になっているんやけどね。まぁ、あのオッサンはバケモノやわ(爆笑)。ところで、記録はともかく最後の最後で優勝出来へんかったことは?

宮西 本当に悔しいの一言です。記録よりもあの試合(5月15日/近畿大2回戦・南港中央)での1勝が欲しかった。今でもそう思います。

−関学はここ数シーズン、5位が指定席みたいな感じやったしね。

宮西 そうですね、最初、入って来た時は弱いチームやなぁと(笑)。まぁ、それは冗談で首脳陣も先輩もシッカリしてはるので今年は最低でもAクラスには入れるという雰囲気でした。

−そういう上を目指すチームで先発投手として投げて行く自信はあったの?

宮西 昨年は期待されていたのが伝わって来ていたのに、左肘の故障もあって応えられなかった。だから、意気込みは違いましたよね。でも、ウチは良い投手が多いので競争なんです。まぁ、2月の宿毛キャンプが終わってからOP戦で調子が良く、結果を残せたのが大きかったですね。
 

時折、宮西が試合中に見せる仕草
「絶対に負けへん」と
自分自身に祈りを捧げているそうだ

−左肘の故障の具合は大丈夫なの?

宮西 はい、もう全く心配はありません。春の新人戦でちょっと力んで放って(苦笑)。それで3ヶ月くらいは投げれなかったんです。せやから、夏は他の投手陣の1.5倍走るのがノルマでした。短いのも、長いのも。だけど、それで下半身が出来て、スタミナとコントロールが良くなったことは間違いないです。

−ケガの功名と言うか走り込みは大事なんやね。ところで、今シーズン、最も印象に残っている試合は?

宮西 やっぱり、リーグ戦初先発(4月3日/同志社大2回戦・西京極)ですね。前の日にボロ負け(11−2)していましたし、重圧と緊張でホンマに押し潰されそうでした(苦笑)。

−そんな状況で初完封やからスゴイねぇ。

宮西 いや、ただ負けたくないと必死に清水さん(誉/捕手)のミットに投げ込んでいただけです。清水さんの考えと自分の描くイメージに差はないんです。だから、この春は1度もサインに首は振ってないです。ホンマに信頼していますよ。


いつか抜かしたるという気持ちは持っている
球持ちの良さが自分の投球の生命線


−基本的なことを確認させて貰いたいんやけれども、宮西君の持ち球(球種)は何があるんかな?

宮西 ストレート、スライダー、カーブにパームですね。パームは高校(市立尼崎高)の先輩になる金刃さんに教えて貰いました。

−チェンジアップ的に使っているんかな?

宮西 そうですね。高校時代はダメやったんですけど、大学に入ってから完成度は高くなりました。この春は1本も打たれてないですよ。

−金刃君は高校の先輩やし、同じ左投手。あっ、背番号も同じ19番やねぇ。やっぱり、尊敬しているんかな?

宮西 はい、金刃さんは憧れでもあるし、目標でもあります。本当に可愛がって貰っていますしね。でも、高校時代は常に金刃さんと比較されていたんです。『金刃はああだったけど、宮西は…』みたいな。だから、いつか抜かしたるという気持ちは持っていますね。

−なるほどねぇ。で、市立尼崎高へ進んだことで野球人生は変わった?

宮西 大きく変わりましたね。金刃さんもそうですけど、竹本さん(修/監督、元阪急投手)という素晴らしい指導者に出逢えたことで投手としての基本を作って貰いました。

−具体的には?

宮西 フォームがどうとかはほとんどないです。精神的なところ、考え方、心構えですね。最初から負けると思ってマウンドに立つなとか、打たれても態度に出すな、平常心でいろとか。あとはチーム自体が考えて野球をしていたので、常に気を配ることも学びました。ボーッとしてたら置いてかれる。そういう危機感を持っていました。今、考えると良い環境やったなと。教わってばかりではなく、自分で考えないと野球は巧くならないですからね。

−その通りやねぇ。

宮西 その高校時代はいつも惜しいところで負けていたんですよね。だから、この春は絶対に勝ちたかった。まぁ、まだまだ自分が力不足ということなんでしょうけど。

−宮西君の投手としての生命線って?

宮西 メッチャ球が速い訳ではないですからね。高校時代は変化球投手だと思っていましたもん(笑)。だけど、大学では清水さんに『お前のストレートはええぞ』って。せやから、今はストレートと変化球のコンビネーションですね。

−本荘コーチからは何て言われている?

宮西 本荘さんからは肘の使い方と球を離す位置。前で球を放せということしか言われないですね。

−宮西君のことを写真で撮るのって難しいんやで。リリースポイントのタイミングが他の投手より前なんだよね。ホンマに球持ちが良いんやから。

宮西 球持ちということは意識するところです。そこがきっと自分の生命線になるんでしょうね。

生で観ることが出来て 対戦することも出来る
投手陣全員で力を合わせて


−今、関西学生リーグにはホンマに左の好投手が多いんやけど。

宮西 ホンマに多いですよね。これは恵まれていると感謝しています。だって、岩田さんや大隣さんを生で観ることが出来るし、対戦することも出来る。感覚的にも、数字的にも目安になります。でも、岩田さんの球はメッチャ速かったです。打席に入ったら見えなかったですもん。見えない球を打てる訳がないです(苦笑)。

−そういったメンバーとこの夏は選抜チーム(関西5リーグ対抗戦など)で一緒にやれる可能性もあるねぇ。

宮西 選ばれたらホンマに嬉しいし、楽しみです。一緒に練習も出来る訳ですし、そこから学べることはたくさんありますからね。

−逆に教えることの方が多かったりして(笑)。

宮西 いやいや、自分はまだまだですよ。って、それよりもホンマに選ばれますかねぇ?

−絶対に選ばれるって(笑)。で、今後の目標はどうやろう?

宮西 この春は他校も自分のデータは少なかったはずですし、何よりも関学がチームとして良かったですからね。当然、秋はチーム自体がマークされると思いますし、自分のことも研究して来るでしょう。だから、秋までには3ヶ月しかないですけど、シッカリと練習をして、もう一段階上を目指します。

−数字的にはどうかな?

宮西 今シーズンの4勝以上はしたいんですけど、僕だけが関学の投手じゃないですからね。学さん(加藤/投手)を中心にして、とにかく投手陣全員で力を合わせて。それでチームが勝てば、結果的に優勝へ繋がると思ってます。この春で優勝争いが出来るということはチームとして分かりましたからね。誰かに白星が付いたら良いんです。連続イニング無失点の記録に関しては、自分が作った記録という意識はあまりないんですけど、自分で塗り替えたいという気持ちはあります。

−まだ先の話しになるけれども、大学卒業後は?

宮西 まだ想像が付かないですけど、小さい頃からの夢であるプロ野球選手になりたいです。その為に今後も調子に乗らずに(笑)、シッカリと考えて、練習をして行きます。

−是非、その夢は叶えられるように!プロへ行って活躍しなきゃアカン訳やし。で、そうなったら僕はもっと宮西君のことを書かせて貰うよ(笑)。

宮西 はい、OKです(笑)。

−そうそう、今日は西京極でリーグ戦の閉会式があるんやけど、何か個人表彰は獲れるかな?

宮西 どうですかねぇ。分からないですけど、本音では欲しいですよね。獲れなかったら、だいぶ凹むと思います(笑)。

−最優秀投手はイケルんちゃうかなぁ。

宮西 楽しみにしています(笑)。


※この後の閉会式で宮西は最優秀投手賞を獲得しました

『打てないですけど(苦笑)』
とのことだが打席ではいつも打ち気満々
打撃が好きなことも良く分かる


『メッチャ恥ずかしいっすねぇ』
相当、照れながらもヤラセの写真撮影にも
なかなか堂々としたもの


【編集後記】

宮西と話していて
『あぁ、この子は根っからの投手なんやなぁ』
と感覚的なものなのだけれども、強く思った。
僕は宮西よりも年齢が一回り(12歳)上であるし、
ましてや大学野球部の先輩になる。
普通ならば、緊張して、気を遣いっ放しのはずだ。
いやいや、宮西が無礼だと言っている訳ではない。
宮西の感性と対応力を誉めたいのである。
少し会話のキャッチボールをして、
僕との的確なスタンスと言うか、間合いを探り当てている。
これは意識していても、なかなか難しいこと。
それを自然にスンナリと出来てしまう宮西。
どこか宮西の投球スタイルと共通するところがあるような気がした。

いやぁ、実に楽しいインタビューであった。